臨床研究デザイン塾14期生の塾で立案した研究論文が国際主要誌「BMC Nephrology」に掲載

BMC NephrologyPrimaria ONLINE 編集長の福原俊一が塾長を務める、質の高い臨床研究を計画・実施するために必要なコア・スキルを学ぶための合宿形式プログラム「臨床研究デザイン塾」の14期生、本多 佑 先生、板野 精之 先生、釘宮 愛子 先生、久保 英二 先生が、塾で立案し、塾終了後も継続して行った研究論文「血液透析患者における下剤処方と死亡リスクの関連:前向きコホート研究」が、国際主要誌「BMC Nephrology」に掲載されました。

Honda Y, Itano S, Kugimiya A, Kubo E, Yamada Y, Kimachi M, Shibagaki Y, Ikenoue T. Laxative use and mortality in patients on haemodialysis: a prospective cohort study. BMC Nephrol. 2021 Nov 3;22(1):363. doi: 10.1186/s12882-021-02572-y. PMID: 34732171; PMCID: PMC8565050.

<掲載サイト>
https://bit.ly/3nCHT4K

<論文タイトル>
血液透析患者における下剤処方と死亡リスクの関連:前向きコホート研究

<論文抄録>
この研究の目的は血液透析(HD)患者における便秘と死亡リスクの関連を検討することである。本研究では、便秘を下剤処方があることと定義した。
J-DOPPSデータベース1-5期に登録された12,217人のHD患者を、登録時の下剤処方の有無で2群に分けた。主要評価項目は観察開始後3年以内の全死亡とした。
対象患者の30.5%に下剤が処方されており、観察期間中に1,240人が死亡した。HD患者において、下剤処方は死亡の増加と統計学的有意に関連していた。(調整後ハザード比[AHR] 1.12; 95%CI 1.03 to 1.21)癌死と感染症死は下剤処方と関連していたが、心血管病死は有意な関連を認めなかった。
結論として、下剤を要する便秘はHD患者の致死率の増加と関連していた。HD患者が便秘にならないような管理をし、結果として下剤処方を減らすことが重要と考えられた。

<執筆者コメント>
2017年に大阪で行われた臨床研究デザイン塾14期で立案した研究を、塾終了後も継続して行いました。日常、臨床の中で、血液透析を受ける患者さんは便秘が多く、下剤の内服率が高いということを感じていたため、このことがよくないことに結びついているのではないか? というクリニカルクエスチョンを検証した研究になります。
塾で得た系統的な臨床研究の知識を元に、塾終了後もオンライン会議などで議論を重ね、研究デザインを洗練していきました。迷ったところなどは京都大学 池之上先生、耒海先生、聖マリアンナ大学 柴垣先生にご指導いただきました。
データベースはiHope、Kyowa Kirin株式会社にご協力いただき、J-DOPPSを利用させてもらいました。そのおかげでビッグデータを扱う研究の利点や問題点について、実感しながら深く考えられる良い機会になりました。
執筆者は皆、臨床現場で医師として働いており、時間も多くはとれない中で進めていきましたので時間がかかりましたが、着実に前に進め、最終的に我々の問いに対する一つの答えを出すことができました。
ここで出会った仲間との関係は一生ものですので、今後も新しいエビデンスが生み出せるよう協力していければと思っています。最後にこのような機会を与えてくださった福原 俊一 先生始め、iHopeの方々に深くお礼申し上げたいと思います。

<執筆者/臨床研究デザイン塾14期生>
東京慈恵会医科大学附属病院 腎臓・高血圧内科 助教 本多 佑
川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 講師 板野 精之
山梨県立中央病院 高度救命救急センター 医長 釘宮 愛子
上尾中央総合病院 腎臓内科 医長 久保 英二

<ファシリテーター>
信州大学医学部附属病院 腎臓内科 医員 山田 洋輔
京都大学 大学院 人間健康科学科 研究員 耒海 美穂
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 柴垣 有吾
京都大学 大学院 人間健康科学科 連携教員(滋賀大学 データサイエンス教育研究センター 講師) 池之上 辰義