Primaria ONLINE 編集長の福原俊一が塾長を務める、質の高い臨床研究を計画・実施するために必要なコア・スキルを学ぶための合宿形式プログラム「臨床研究デザイン塾」の13期生、稲山 えみ 先生、岸田 真嗣 先生、北村 峰明 先生、山田 洋輔 先生が塾で立案し、塾終了後も継続して行った研究論文「血液透析アクセス穿刺時の痛みを軽減させる音楽の効果:クロスオーバー無作為化試験」が、国際主要誌「CJASN」に掲載されました。
Emi Inayama, Yosuke Yamada, Masatsugu Kishida, Mineaki Kitamura, Tomoya Nishino, Keiko Ota, Kanae Takahashi, Ayumi Shintani and Tatsuyoshi Ikenoue. Effect of Music in Reducing Pain During Hemodialysis Access Cannulation: A Crossover Randomized Controlled Trial. CJASN September 2022, 17 (9) 1337-1345.
<掲載サイト>
<論文タイトル>
血液透析アクセス穿刺時の痛みを軽減させる音楽の効果:クロスオーバー無作為化試験
<論文抄録>
血液透析を受けている患者にとって、穿刺痛は切実な問題であり、音楽を聞くことで、これらの痛みを軽減できるかどうかを調べた。
穿刺中に痛みを訴えた121人の血液透析患者を対象に、多施設、単盲検、クロスオーバー無作為化試験を行った。穿刺中に「2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448」またはホワイトノイズを聞く、という2つの介入を比較した。主要評価項目は、患者自身が評価した穿刺痛のVASスコアだった。ベースラインのVAS疼痛スコアの中央値は24.7mm(IQR 16.5~42.3)だった。VAS疼痛スコアは、ホワイトノイズ群と比較して、音楽群では-12.2%(CI -21.1~-2.3; P=0.017)減少した。不安や血圧、唾液アミラーゼによって評価されたストレスの副次評価項目に対する効果は検出されなかった。介入による有害事象はみられなかった。音楽を聞くことで、血液透析患者の穿刺痛が軽減された。
<執筆者コメント>
研修後すぐに民間病院に就職した私には、研究の仕方や論文の書き方を学ぶ機会がありませんでした。(iHopeが主催する)臨床研究てらこ屋で目から鱗が落ちた私は、臨床研究への思いが強くなり、臨床研究デザイン塾に参加しました。完全に仕事や家庭から離れて、研究の事だけを考えられる環境をいただき、寝る間も惜しんでRQをブラッシュアップし、13期の優秀賞をいただくことができました。あの時の感動、知識と学べる環境を与えてくださった先生方への感謝は、論文にしてお返しすると誓いました。この研究の論文化を目指して6年もの間継続できたのは、福原先生をはじめ、多くの先生方からいただいた激励と、この思いがあったからです。とはいえ、ここに至るまでは決して平坦な道のりではなく、私1人では到底継続できませんでした。
最初はファシリテーターとして、途中からはチームの一員として、常に私達を導いてくれた池之上先生。研究に不可欠なRed Capシステム構築、プロトコール論文作成、医学統計の先生とのご縁をくださった岸田先生。倫理委員会開催・承認に尽力し、チームのバランスメーカー的存在、Corresponding authorである北村先生。チームの機動力、いつもパワフルで最後までこの研究を引っ張ってくれた山田先生。この中の誰一人欠けても今回の成功はなかったでしょう。
運命の出会いから6年、一つの形になったことも嬉しいですが、最高のメンバーと出会えたことが私の一生の宝です。みなさんとこの研究ができて本当に良かったです。ありがとうございました。
<執筆者/臨床研究デザイン塾13期生>
みはま佐倉クリニック 稲山 えみ
国立循環器病研究センター 腎臓内科 岸田 真嗣
長崎大学病院 腎臓内科 医学博士 北村 峰明
信州大学医学部付属病院 腎臓内科 医学博士 山田 洋輔
<ファシリテーター>
京都大学 大学院 医学研究科・人間健康科学連携 教員/滋賀大学 データサイエンス教育研究センター 講師 池之上辰義